The Making of Don Pasquale
連日の立ち稽古が続く8月31日。都内某所にある、オペラ「ドン・パスクワーレ」の稽古場を撮影しました。
今回のオペラを、創り上げていく裏側を記録した、貴重なメイキング写真をお届けします。
衣裳や髪形は、実際の舞台とは違います。この練習風景が、本番の舞台では、はたしてどうなっているのか…!?
舞台とのギャップをお楽しみください。
■舞台設定は、1953年の映画「ローマの休日」8月22日、オペラ・オーストラリアのキャストとスタッフが来日し、都内の稽古場で、本格的な稽古が始まりました。
オリジナルのオペラ「ドン・パスクワーレ」は、19世紀初めのイタリア・ローマを舞台にした喜劇です。しかし、今回のグランドオペラJapan「ドン・パスクワーレ」では、観客が共感しやすいよう、時代背景を1950年代初頭に設定しました。
特に、1953年に製作された映画、「ローマの休日」をイメージしています。
オープニングや幕間で観客が目にするスクリーンも、1950年代の映画のポスターを意識して作られています。
■キャラクターと衣裳
ヒロイン・ノリーナは、「ローマの休日」のヘプバーン風の、50年代の上品なテイラード・スーツやサンラス、オートクチュールのドレスを着ています。エルネストは、「ローマの休日」のグレゴリー・ペック風の、カジュアルな装いです。
タイトルロールのドン・パスクワーレは、エルネストとは対照的に、フォーマルなスーツや浴衣で、元大使の老人にふさわしく、きちんと仕立てられた衣裳です。
その他の出演者は、季節が夏の設定なので、白っぽいサマースーツです。
ところで、「ローマの休日」では、オードリー・ヘプバーンが抜け出して、通りを抜けて行くシーンがあり
ます。製作スタッフは、「ローマの休日」のDVDを見ながら、一時停止してスケッチし、衣裳やセットのヒントにしました。映画のシーンに出てくるさまざまな人物の衣裳が、このオペラにも登場します。皆の衣裳にもご注目ください。
なお、これらのメイキング写真は、稽古場での様子を撮影したものです。実際の舞台での衣裳や髪形は、またさらに違います。メイキングと、舞台との違いをお楽しみに!
■舞台にベスパも登場
「ローマの休日」では、ヘプバーンとグレゴリー・ペックが、ローマの街をベスパで走る有名なシーンがあります。このオペラでも、本物のベスパが登場します。
■音楽と演技
オペラでは、歌はもちろん、一人ひとりの演技も重要です。ノリーナとエルネストも、恋人同士の雰囲気満点です。2人が座る重厚なソファは、実際の舞台にも登場します。
■オペラはアリア(歌)も大事だけれど、ドラマも大事。
演出家ロジャー・ホッジマンは、次のように述べています。
「人々がオペラを愛する主な理由は、アリアですが、観客は物語を見るために劇場にやって来ます。ですから、物語がきちんと語られた時に、そのオペラは成功となるのです。オペラのストーリーは、アリアと同様かそれ以上に、レシタティーヴォ(叙述的な台詞)を通じて語られます。ですから、レシタティーヴォはとても重要です。そこで、物語のほとんどが語られるからです。一方、アリアは人々が耳を傾け、じっくり考える部分なのです。もし、物語を表現しないなら、録音したCDを聞くのと同じになります。そして、音楽と演技という、2つの要素の結合によって、すばらしい舞台が完成するのです」
■ビクトリア調の邸宅が、モダンな調度に早変わり
ドン・パスクワーレの邸宅は、はじめは古めかしく重厚な、ビクトリア調で
統一されてます。しかし、これがドラマの途中で、ガラッとかわるのです。そし
て庭には、藤とジャスミンが満開に咲いています。
ドン・パスクワーレは、70才の元大使の設定です。そこで、喜劇にふさわしく、裕福な老人らしいおかしさを出すため、深見東州(半田晴久)氏は、お腹に分厚い肉襦袢を入れています。実際の深見氏は、もっとスリムです。
また、実際の舞台では、もっと70才の老人らしい姿で登場します。この写真との、ギャップをお楽しみ下さい。
■深見東州氏の書の掛け軸
オリジナルのオペラでは、主人公ドン・パスクワーレは、イタリア人でお金持ちの独身老人です。しかし、今回のオペラでは、ドン・パスクワーレは日本人で、イタリアに大使として赴任し、そのままイタリアに住んでる老人の設定にしました。これを、唯一の日本人キャストである、深見東州(半田晴久)氏が演じます。
ドン・パスクワーレの邸宅には、書家でもある深見氏が実際に書いた、書の掛け軸が飾られています。
「恕」という字で、「思いやり」のことですが、「怒」の字に似てる所が面白い。これも、お見逃しなく。